「どうやってなおすかわからないものを、壊し続けるのはもうやめてください」。1992年、リオデジャネイロで開催された地球サミットで、12歳の少女、セヴァン・スズキは大人たちに環境破壊を止めるよう訴えかけた。
その伝説のスピーチから、来年で20年。もうすぐ母親となるセヴァンは「大切なのは生活の質と健康、そして子供。だから私は自己中心的に、自分たちをどう救うかを考えていきたい」と、未来の子どもたちのために発言を続けている。セヴァンが今、世界に伝えたいこと、そして彼女の声に呼応するかのように、日本とフランスで傷ついた地球と向き合い続ける人々の姿を追ったドキュメンタリー。
2009年に映画『未来の食卓』でフランス、バルジャック村の、学校給食と高齢者の宅配給食をオーガニックに変えるという挑戦をドキュメントしたジャン=ポール・ジョー監督。続編である本作の製作にあたり、ジョー監督は自分の発言に責任を持って行動に移すよう大人たちに変革を求めるセヴァンの姿に感銘を受け、彼女を中心に本作を製作することを決意した。
19年前のセヴァンのスピーチの後、地球を取り巻く状況は変わっていない。しかし29歳となったセヴァンのお腹には新しい生命が宿った。自らが子どもを守る"大人"となった今、セヴァンはカナダのハイダグワイ島で自然と共存する生活を実践し、世界中の人々に再度訴えかける。行動を起こすなら今がその時だ、と。
そして歯止めの効かない環境破壊や相次ぐ原発の事故を受け、多くの人々がこれまでの自らの無関心を省みる中、セヴァンが19年前に抱いた危機感を共有し、行動を起こしてきた人々がいる。ジョー監督は、福岡県で合鴨農法によってオーガニック米を作る古野農場の百姓百作の精神、地域の子どもたちのために161人の農婦が無農薬食材を育てる福井県の池田村、『未来の食卓』の題材にもなったフランス、バルジャック村近くの原子力発電所の問題や村のその後の様子、コルシカ島のワイン農家、アレナ一家がビオワインに込めた島への思い、そして13歳にしてサメの乱獲反対を訴え組織を立ち上げた少女オンディーヌの活動を取材。彼らは地球の悲鳴を肌で感じ、セヴァンと志をひとつにする。
フランス人環境ジャーナリストのニコラ・ウロ、人間性の回復を長年説いてきた農民であり思想家のピエール・ラビ、遺伝子組み換えの危険性をいち早く唱えたエリック・セラリーニ教授もまた、セヴァンの同志であり、経済優先の社会に警鐘を鳴らす。
「私たちが考えるべきことは、現実に起こっているさまざまな環境問題の先にどんな未来が待つのか、ということ。私たちの子どもの未来を守るために、生き方を変えなくては」。セヴァンは私たちに、そして自分自身にそう語りかける。
『セヴァンの地球のなおし方』(2010年/フランス/120分)
監督:ジャン=ポール・ジョー(『未来の食卓』)
プロデューサー:ベアトリス・カミュラ・ジョー
出演:セヴァン・スズキ、ハイダグワイの人びと、古野隆雄、福井県池田町の人びと、バルジャック村の人びと、ポワトゥーシャラントの人びと、コルシカ島の人びと、オンディーヌ・エリオット、ニコラ・ウロ、ピエール・ラビ、他
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