アフガニスタンは現在、再生の狭間でもがいています。
それは23年間続いた戦争の結果です。
アフガン人一人ひとりの人生には常に戦争が存在しています。
私たちアフガン人は戦争が生んだ結果にすぎないのです。
私は映画を通してこの国の人々だけでなく
世界の人々に知ってもらいたいと思いました。
アフガニスタンの悲劇の深さを。
人々の胸に秘められた悲しい思いを。
振り返られることのない私たちの心の内を。
この痛みを伝えられるのはアフガン人である我々自身だけなのです。
私は、主人公の少女を探して3400人の少女達と会いました。
そして、ある日路上で一人の物乞いの女の子と出会ったのです。
「お恵みください」そう言った少女の目には深い悲しみが宿っていました。
それがマリナでした。
撮影中マリナが涙を流す時、彼女はいつも戦争のことを思い出していました。
姉を亡くしたこと、父親の足が一時的に不自由になったこと、
兄弟姉妹と空腹で夜を明かしたこと。
当初、この映画のタイトルは『虹』でした。
「虹をくぐれば自由になれる」という、アフガンの昔からの言い伝えからつけたのです。
映画は少女が虹をくぐり自由をつかむ場面で終わる予定でした。
私は撮影が終わったラッシュプリントを何度も観ました。
そして何度も考えたのです。
今のアフガニスタンに自由、そして希望はあるのか?
考えた結果、
虹のシーンはカットすることに決めました。
少女が虹をくぐり自由と希望に向かうラストシーンは、
今はまだ描けないと思ったのです。
ラストは、アフガニスタンの悲劇が終わっていないことを伝えるシーンに替えました。
この映画の少女はアフガニスタンの悲劇そのものなのです。
そして、世界がアフガニスタンを忘れれば、
悲劇は再び繰り返されるかも知れません。
セディク・バルマク
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