監督・脚本 ロウ・イエ

監督・脚本 ロウ・イエ

1965年、劇団員の両親のもと上海に生まれる。1983年に上海華山美術学校アニメーション学科卒業後、上海アニメーションフィルムスタジオにてアニメーターとして働く。1985年、北京電影学院映画学科監督科入学。

1980年代から1990年代初期にかけての上海の満たされない若者たちを撮った卒業製作映画『デッド・エンド 最後の恋人』(1994年)は、中国の伝統と典型的な中国文化に重きをおいた第5世代の監督たちの作品とは一線を画した作品で、中国映画史上、最年少の作家が集まって製作した点でも話題となり、1996年のマンハイム・ハイデルバーグ映画祭で監督賞を受賞。

1995年、ほかの第6世代の監督らと共にテレビ映画のプロジェクト「スーパーシティ・プロジェクト」を企画。プロデューサーとして、若手監督に心ゆくまま自分の撮りたい作品を撮るチャンスを与えた。彼自身が手掛けたサイコミステリードラマ『危情少女 嵐嵐』(1995年)はテレビ用の長編映画だが、ナレーションなしで作られ、その演出は中国のテレビ映画界に衝撃を与えた。

1998年、自らの会社ドリーム・ファクトリーを設立。中国初のインディーズ映画製作会社となる。第2作目、上海の通りで密かに撮られた『ふたりの人魚』(2000年)は中国国内で上映を禁止されながらも、2000年のロッテルダム国際映画祭と東京フィルメックスでグランプリを獲得。続く『パープル・バタフライ』ではチャン・ツィイーや仲村トオルらを起用し、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品された。1989年の天安門事件にまつわる出来事を扱った『天安門、恋人たち』は、2006年の第59回カンヌ国際映画祭で上映された結果、5年間の映画製作・上映禁止処分となる。

禁止処分の最中に、中国では未だタブー視されている同性愛を描いた『スプリング・フィーバー』が、第62回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞。パリを舞台に、北京からやってきた教師と、タハール・ラヒム演じる建設工の恋愛を描いた『パリ、ただよう花』は第68回ヴェネツィア国際映画祭のヴェニス・デイズ、および第36回トロント国際映画祭ヴァンガード部門に正式出品された。2011年に電影局の禁令が解け、中国本土に戻って撮影された本作『二重生活』は、第65回カンヌ国際映画祭ある視点部門に正式招待。ほか、第7回アジア映画大賞(アジアン・フィルム・アワード)で最優秀作品賞ほか3部門を受賞。中国現代文学の代表的作家でありロウ・イエと親しい友人でもあるピー・フェイウー(畢飛宇)の小説を原作にした『ブラインド・マッサージ(英題:Blind Massage/原題:推拿)』は第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞。日本では2014年9月にアジアフォーカス・福岡国際映画祭にて先行上映された。

フィルモグラフィー

1994年
『デッド・エンド最後の恋人(英題:Weekend Lover /原題:周末情人)』
第45回マンハイム・ハイデルベルク国際映画祭 監督賞受賞
1995年
『危情少女 嵐嵐(英題:DON'T BE YOUNG/原題:危情少女)』〈テレビ映画〉
2000年
『ふたりの人魚(英題:Suzhou River/原題:蘇州河)』
第29回ロッテルダム国際映画祭タイガー・アワード受賞
第1回東京フィルメックス 最優秀作品賞受賞
2003年
『パープル・バタフライ(英題:Purple Butterfly/原題:紫蝴蝶)』
第56回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品
2006年
『天安門、恋人たち(英題:Summer Palace/原題:頤和園)』
第59回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品
2008年
『スプリング・フィーバー(英題:Spring Fever/原題:春風沈酔的晚上)』
第62回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞
2011年
『パリ、ただよう花(英題:Love and Bruises/原題:花)』
第68回ヴェネツィア国際映画祭ヴェニス・デイズ正式招待
第36回トロント国際映画祭ヴァンガード部門正式招待
2012年
『二重生活(英題:Mystery/原題:浮城迷事)』
第65回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式招待
第7回アジア映画大賞最優秀作品賞
2014年
『ブラインド・マッサージ(英題:Blind Massage/原題:推拿)』
第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞芸術貢献賞受賞

スタッフ

脚本:メイ・フォン

1968年浙江省生まれ。1995年に北京電影学院文学専攻、修士課程修了後、同学院の映画史の講師となり、アメリカ映画について研究。ロウ・イエの作品には『パープル・バタフライ』で脚本顧問として携わり、『天安門、恋人たち』で共同脚本を手掛け、『スプリング・フィーバー』で脚本を担当し、第62回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した。

撮影:ツアン・チアン

『天安門、恋人たち』『スプリング・フィーバー』で撮影・編集を担当。ロウ・イエ監督次回作『ブラインド・マッサージ』でも撮影を担当し、2014年台湾金馬奨撮影賞にノミネートされている。他、主な作品に『ブッダ・マウンテン 希望と祈りの旅』(13、リー・ユー監督)がある。

編集:シモン・ジャケ

2002年よりエディターとして活躍。主な映画作品に『パリ、ジュテーム』(06、オムニバス作品)、『よりよき人生』(11、セドリック・カーン監督)などがある。

音楽:ペイマン・ヤズダニアン

1969年テヘラン生まれのピアニスト、作曲家。6歳でピアノを始める。40以上のソロ・ピアノ作品を作曲し、国内外の映画の音楽も多く制作、演劇などのオリジナル・サウンドトラックも手掛ける。サウンドトラックを手掛けた主な作品に『風がふくまま』(99、アッバス・キアロスタミ監督)、『クリムゾン・ゴールド』(03、ジャファル・パナヒ監督、アッバス・キアロスタミ脚本)などがある。ロウ・イエ監督作品は『天安門、恋人たち』、『スプリング・フィーバー』、『パリ、ただよう花』に続き、本作が4本目となる。