FILM or DIGITAL ?出演者たちの発言集
マーティン・スコセッシ Martin Scorsese
『タクシードライバー』『グッドフェローズ』『シャッターアイランド』監督
『ヒューゴの不思議な発明』(2011年) 撮影:デジタル(カメラ/アリ Alexa)
デジタルという新たなメディア改革にワクワクしている。フィルムが支えてきた映画文化にはさらに先がある。新たな手段は有効に使えばいい。
ジョージ・ルーカス George Lucas
『THX 1138』『アメリカン・グラフィティ』『スター・ウォーズ』監督
『レッド・テイルズ』(2012年/製作総指揮) 撮影:デジタル(メインカメラ/ソニー F35)
『スターウォーズ』を撮り終えた1978年には、デジタル映像の実験を始めていた。専門部門を立ち上げ、専用のコンピュータを開発した。「業界を破壊する悪魔の化身だ」と大いに非難されたよ。
ジェームズ・キャメロン James Cameron
『ターミネーター』『アビス』『タイタニック』監督
『アバター』(2009年) 撮影:デジタル(メインカメラ/ソニー F950)
想像したことを実現するために、フィルムではできなかったことをすべて試したかった。デジタルの登場で、可能性の扉が開いたように感じた。
デヴィッド・フィンチャー David Fincher
『セブン』『ファイトクラブ』『ソーシャル・ネットワーク』監督
『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年) 撮影:デジタル(カメラ/レッド・デジタル・シネマカメラ Red One, Epic)
デジタルを見下す人もいるだろう。金の卵を産むガチョウを殺すだけではなく、まず辱めようとするのさ。
デヴィッド・リンチ David Lynch
『エレファント・マン』『ブルーベルベット』『マルホランド・ドライブ』監督
『インランド・エンパイア』(2006年) 撮影:デジタル(カメラ/ソニー PD150)
全員に紙と鉛筆を持たせたからといって、秀逸な物語がたくさん生まれるわけじゃない。今の映画の状況も同じだよ。
クリストファー・ノーラン Christopher Nolan
『インソムニア』『インセプション』『ダークナイト』監督
『ダークナイト ライジング』(2012年) 撮影:フィルム(メインカメラ/アリ Arriflex235)
デジタルメディアによって可能なことは、一見、魅力的だが中身がない。クッキーにたとえると、焼き立ては軟らかくてとてもおいしい。でも数か月経ってみるとひどい味で食べられたものじゃない。
スティーヴン・ソダーバーグ Steven Soderbergh
『トラフィック』『オーシャンズ11』『チェ 28歳の革命/39歳 別れの手紙』監督
『マジック・マイク』(2012年) 撮影:デジタル(カメラ/レッド・デジタル・シネマカメラ Epic)
初めてレッドの製品を試した時、これこそ未来だと、誰かに伝えたいと思った。解像度もトーンカーブも光も新しい感触だった。撮影者とカメラ製作者の密な関係は、フィルムカメラの時代には考えられなかった。
ラナ&アンディ・ウォシャウスキー Lana&Andy Wachowski
『暗殺者』『マトリックス』『クラウド アトラス』監督
『スピード・レーサー』(2008年) 撮影:デジタル(メインカメラ/ソニー F23)
デジタルカメラのおかげで、とても安上がりに物語を伝えられるようになった。限られた人たちのみによって作られてきた芸術が、多くの人々に開放された。
ラース・フォン・トリアー Lars von Trier
『奇跡の海』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『アンチクライスト』監督
『メランコリア』(2011年) 撮影:デジタル(メインカメラ/アリ Alexa)
僕にとってデジタルへの移行は当然のことだった。カメラに収められる映像の量が圧倒的だからね。役者との向き合い方を変えようとしていたから、必然だった。
ダニー・ボイル Danny Boyle
『トレインスポッティング』『28日後...』『スラムドッグ$ミリオネア』監督
『127時間』(2010年) 撮影:デジタル(メインカメラ/シリコンイメージ SI-2K)
伝統的なフィルムのリズムを破る自由を僕は楽しんでいる。デジタル撮影を通じてその魅力を知った。求めていたものだと思った。
ロバート・ロドリゲス Robert Rodriguez
『デスペラード』『フロム・ダスク・ティル・ドーン』『シン・シティ』監督
『スパイキッズ4D:ワールドタイム・ミッション』(2011年) 撮影:デジタル(カメラ/アリAlexa)
デジタルはまだまだ発展する。僕らはその一翼を担ってるんだ。フィルム撮影で気に入らないのは、成果がすぐ見えないこと。暗闇で絵を描くようなものだ。だからこそ僕は自分でカメラを回し演技を指導する。
リチャード・リンクレイター Richard Linklater
『スクール・オブ・ロック』『ファーストフード・ネイション』『スキャナー・ダークリー』監督
『バーニー』(2011年) 撮影:デジタル(カメラ/アリAlexa)
フィルムの時代には、映画製作なんて途方もないことに思えた。仲間たちとよく喫茶店で、もし誰かがチャンスをくれたら、すごい映画を作ってみせるなどと話したものだった。
ジョエル・シューマカー Joel Schumacher
『評決のとき』『バットマン・フォーエヴァー』『ヴェロニカ・ゲリン』監督
『ブレイクアウト』(2011年) 撮影:デジタル(カメラ/アリAlexa)
先人たちは、僕らに夢を見る新たな手段を提供してくれた。それと同じことを続けていって、新たな夢を見る手段を人々に与えるのが僕らの仕事だと思う。
レナ・ダナム Lena Dunham
『Girls』『タイニー・ファニチャー』『ディーリング』『クリエイティブ・ノンフィクション』監督
『タイニー・ファニチャー』(2010年) 撮影:デジタル(カメラ/キヤノン 7D)
デジタルビデオがなければ映画は作らなかった。私は脚本家としてスタートしたから、機械の知識もないし、撮影は無理だと思っていた。
バリー・レヴィンソン
『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』『レインマン』『グッドモーニング, ベトナム』監督
『トラブル・イン・ハリウッド』(2008年) 撮影:デジタル(メインカメラ/アリ Arricam ST/LT)
デジタルは変化を続け、ストーリーテリングの性質も、想像もできない形に変わり続けるだろう。大きな革命だよ。
ヴィットリオ・ストラーロ
『地獄の黙示録』『ラスト・エンペラー』撮影監督
『フラメンコ、フラメンコ』(2010年) 撮影:デジタル(カメラ/レッド・デジタル・シネマカメラ Red One)
撮影監督には芸術の知識も必要だ。芸術と技術のいずれも、今の映画には欠かせない。この革命に参加しなければ置き去りにされる。無関心を装い、他人任せにしてはならない。関わるべきだ。
アンソニー・ドッド・マントル
『セレブレーション』『スラムドッグ$ミリオネア』『127時間』撮影監督
『第九軍団のワシ』(2011年) 撮影:フィルム(メインカメラ/アリ Arriflex 235)
ソニーのPC3でサッカーの試合の観客を撮影していて、その親近感と明るさが神秘的に感じられた。映像を見てそのカメラの可能性に気づいた、カメラの動きが醸し出す情感がカギになると思った。
ウォーリー・フィスター
『インソムニア』『インセプション』『ダークナイト ライジング』撮影監督
『マネーボール』(2011年) 撮影:フィルム(カメラ/アリ Arriflex435ES)
映像の質が劣る手段がフィルムを脅かしている現状を残念に思う。油彩画を捨ててクレヨンを使うようなものだ。僕は一番最後までフィルムを使う撮影監督になるよ。でも、10年以内には自分もデジタルを使うと思う。
リード・モラーノ
『フローズン・リバー』『リトル・バーズ』『ザ・マジック・オブ・ベルアイル』撮影監督
『フォー・エレン』(2012年) 撮影:フィルム(カメラ/アリ Arricam LT)
フィルムは独特の質感と粒状構造が魅力ね。個人的には、温かみがあるフィルムの味わいに、とても心を癒やされる。5年後10年後にもフィルムが残ってほしいわ。
ミヒャエル・バルハウス
『グッドフェローズ』『ギャング・オブ・ニューヨーク』『バガー・ヴァンスの伝説』撮影監督
『ディパーテッド』(2000年) 撮影:フィルム(メインカメラ/アリ Arricam ST)
あらゆることに共通する真理がある。自分が納得した上で誠心誠意、真剣にやるなら、何を使おうが関係ないよ。
ヨスト・ヴァカーノ
『U・ボート』『トータル・リコール』『スターシップ・トゥルーパーズ』撮影監督
『インビジブル』(2006年) 撮影:フィルム(メインカメラ/アリ Arriflex 435)
デジタルカメラはフィルムほど明暗の幅が広くない。だからフィルムなら撮れる範囲内でも、デジタルでは撮り切れない事態が起きる。
ヴィルモス・ジグモンド
『未知との遭遇』『ディア・ハンター』『ブラック・ダリア』撮影監督
『死と乙女という名のダンス』(2011年) 撮影:デジタル(カメラ/レッド・デジタル・シネマカメラ Red One)
フィルム撮影には100年の歴史があり、今も健在だ。ルーカスは20年前にフィルムは死んだと言ったが、今もフィルムを好む人がいる。映像が美しいからだ。
ウォルター・マーチ Walter Murch
『ゴット・ファーザー』『イングリッシュ・ペイシェント』編集
デジタル技術によって、映像も音声も加工の幅が広がった。映像と音声の加工をする僕らにとって、それはフィルムにはない魅力だ。フィルムではあれほどの加工は実現できない。
アン・コーツ
『アラビアのロレンス』『エレファントマン』『エリン・ブロコビッチ』編集
コンピュータの習得は素人の私には大変だった。マウスは床を這うと思ってたけど、一から勉強して使えるようになった。すっかり気に入ったわ。
クレイグ・ウッド
『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』『あの日、欲望の大地で』『ランゴ』編集
フィルムを扱うことで、コンピュータでは得られない訓練ができる。フィルムにハサミを入れ接合する作業には、決断力が要るからね。
クリス・レベンゾン
『トップガン』『PLANET OF THE APES /猿の惑星』『ダーク・シャドウ』編集
編集室は静かなものだよ。フィルムの回る音はもう聞こえない。昔は騒々しくてにぎやかだったが、今はとても静かだ。香をたけるくらいだね。ロウソクもいい。
ティム・スティパン
テクニカラー社 DIカラリスト
仕上げにおけるカラリストの役割は重要だ。僕のボタン操作1つで作品が変わる。もちろん監督たちから指示は受けるが、調整は直感に頼る部分が大きい。映像を完成させる最後の人間なんだ。
ジョナサン・フォークナー
フレームストア社 VFXスーパーバイザー
視覚効果部門は、まるでサンドイッチのようにフィルムを重ねていた。それがフィルムを劣化させる原因になっていた。デジタル化の利点は、劣化がまったくないことだ。
デニス・ミューレン
ILM社 VFXスーパーバイザー
視覚効果も100年の間は模型で工夫が重ねられた。だが昔の方法では限界があった。スターウォーズでは、大変な苦労を強いられた。
ゲーリー・アインハウス
コダック社 最高技術責任者
フィルムは撮影と保存のための媒体だ。だから正しい条件の下に保管すれば、100年後でも映像を見ることができる。フォーマットは変わらない。
ヴィンス・ペイス
キャメロン・ペイス・グループCEO
3Dにするにはカメラだけでなく、レンズ効果などもペアにする必要がある。2倍大変だと言われるが、それ以上だね。僕にとってのだいご味は、人びとを想像を超える世界に運べることだよ。
ジム・ジャナード
機材メーカー:レッド・デジタル・シネマカメラ社 創設者
デジタルはフィルムの良さを軽視し、質もフィルムより劣っていた。地上に存在するすべてのものは、より良いものへと進化させられると僕は思っている。問題は、誰がいつやるかだ。
アリ・プレスラー
機材メーカー:シリコンイメージング社 CEO
『スラムドッグ』で ドッド・マントルは、街を駆け回る子供の姿を同じ目線で撮ろうとした。当時はサイズ的にSI-2K以外に選択肢がなく、彼はバックパックにMacBook Proを入れ撮影データを保存した。
アレック・シャピロ
機材メーカー:ソニー社 販売マーケティング上席副社長
ソニー創設者 盛田昭夫は、ハリウッドに傾倒していた。35mmフィルムと同等の映像を撮影できる電子カメラを設計するのが彼の夢だった。