ヨハネス・フェルメール

レンブラントと並び17世紀のオランダ美術を代表する風俗画家。43歳と生涯は短く、遺した作品数が少ないため、フェルメールの作品は希少価値が高く、地球上でもっとも高価な作品といえる。 フェルメールの作品は1970年代から5回も盗難にあっている。

 

フェルメール 盗難事件

■1971年9月、<恋文>
場所:ベルギー、ブリュッセルで行われていた展覧会場
「インドに流出した約700万人の東パキスタン難民に対し、オランダとベルギー政府が義損金として2億ベルギーフラン(約400万ドル)を送り、 両国の美術館が国際的な反飢餓キャンペーンを打てば絵は返す」という内容の脅迫電話をかけてきた若いベルギー人が、犯行の10日後に逮捕されるも、 見つかった絵は額縁からナイフで切り取られ、大きな損傷を受けていた。

■1974年2月、<ギターを弾く女>
場所:ロンドン、ケンウッドハウス
作品と引き換えに、無期懲役刑に処せられているIRA暫定派のテロリスト、プライス姉妹をロンドンの刑務所から北アイルランドの刑務所に移送せよとの要求が犯人から突きつけられた。ラスボロー・ハウスで盗難された絵<手紙を書く女と召使い>が発見された後、ロンドン市内の墓地に置き去りにされた状態で発見される。犯人はまだ分かっていないが、IRAのシンパだろうと考えられる。

■1974年4月、<手紙を書く女と召使い>含む18点
場所:アイルランド郊外、ラスボロ-・ハウス
ロンドンで起こった<ギターを弾く女>事件と動機は共通。 イギリス政府はいずれの要求にも屈せず、テロには譲歩しないという態度を堅持し続けた。 事件が起こった1週間後にアイルランド南部でイギリスの女性IRA 活動家が逮捕され、絵も発見された。

■1986年5月、<手紙を書く女と召使い>含む11点
場所:アイルランド郊外、ラスボロ-・ハウス
ほとんどが74年に盗まれた絵と同じで、被害推定額が3千万ドルから4千5百万ドルと報道された。IRAの犯行ではないかと騒がれたが、93年に囮捜査により犯人グループを逮捕。中心人物はダブリンの悪名高き犯罪者マ-ティン・カ-ヒル。動機は闇市場で絵を転売し金を手に入れることと、世間を騒がせて警察や政府に恥をかかせることであった。

■1990年3月、<合奏>含む11点の絵画、彫刻、骨董品計13点
場所:ボストン、イザベラ・スチュワ-ド・ガ-ドナ-美術館
ボストン市警を名乗る2人組が現れて美術館警備員を拘束し、美術品13点を強奪の上、逃走。警備員は犯人の顔を覚えており、すぐ解決するだろうと思われていたが、これらの絵画は依然として発見されておらず、イザベラ・スチュワート・ガードナーの「どの作品も動かしたり置き換えたりしてはならない」という遺言によって、かつて名作のあった場所には、空の額が置かれている。


参考文献:『謎解きフェルメール』 / 小林頼子 朽木ゆり子 著