―レイチェル・カーソンの最後の著書、『センス・オブ・ワンダー』
誰もが生まれながらにして持っている、神秘さや不思議さに目を見張る心="センス・オブ・ワンダー"がいつまでも失われませんように。そんな願いが込められたレイチェル・カーソンの最後の著書、『センス・オブ・ワンダー』。わが子のように愛した大甥のロジャーと過ごした日々をゆっくりと振り返るように、小さな生命や広大な自然とのふれあいを描き、世界中でベストセラーとなった。地球や生命の美しさを見て、聞いて、触れて、嗅いで感じることのよろこび、そして子どもたちが豊かな感性を育むための時間の過ごし方が、愛情あふれる言葉で綴られている。
カーソンは癌を患いながらも残された力のすべてをこの本に注いだが、完成を前に息を引き取った。しかしその翌年、1965年にカーソンの遺志を継いだ友人たちの手によって出版が果たされた。本書はロジャーに捧げられ、現代を生きる私たちにも多くの影響を与え続けている。
レイチェル・カーソン著 上遠恵子訳
新潮社『センス・オブ・ワンダー』
アメリカ、ペンシルバニア州生まれ。
環境保護のパイオニアとして知られる。アメリカ漁業局勤務時に行った海洋調査の内容を詩情豊かな文章にまとめた『潮風の下で』(1941年)、『われらをめぐる海』(1951年)、『海辺』(1955年)はいずれもベストセラーとなった。1952年、執筆に集中するため漁業局を離れる。
1962年には代表作とも言われる『沈黙の春』を上梓。1964年、癌により逝去。没後、友人たちの手によって出版された『センス・オブ・ワンダー』は版を重ね、世界中で世代を越えて愛読されている。カーソンと彼女の著作を称賛するアル・ゴア氏は、「『沈黙の春』がなかったら、ひょっとすると環境運動は始まることがなかったかもしれない」と述べている。