ストーリー
本作は、2021年5月にガザで空爆により亡くなった子どもたちをパレスチナ映画監督ムハンマド・サウワーフとイギリス人映画監督マイケル・ウィンターボトムが共同で制作したドキュメンタリー。英題は『ELEVEN DAYS IN MAY』で、5月の11日間で少なくとも67人のガザの子供たちが亡くなったことを元に映像化しています。
当時のアーカイブと個人の証言を通じて、世界中の子供たちとほぼ同じ希望、夢、野心を持つ、男の子や女の子としてそれぞれの子供たちの物語を語ります。
そして、映画『メッセージ』の音楽で知られ、日本でも人気の高いマックス・リヒターの音楽により人々の情感に語りかけるような映画となっています。
監督メッセージ
戦争の厳しさにもかかわらず、撮影中に家族の話を聞き、子供たちを失った悲しみを目の当たりにしたとき、
彼らの反応は戦争そのものの経験よりも私たちにとってつらいものでした
遠い国の戦争について聞いても、あまり心配しないのは簡単です。この映画は、子どもたちと、彼らを悲しむ家族に声を与えようとしています。
人々が彼らの話を聞けば、彼らは忘れ去られることはないでしょう
コメント/寄稿
いまパレスチナで起きていることは”戦争”でも“宗教の争い”でも
”ハマスが10月7日にしたことへの報復”でもなく、
76年間続いてきたイスラエルによるパレスチナ人の虐殺と民族浄化です。
いまこの瞬間も世界は、無実の子どもが殺されることを許している。
好きなことがあった、やりたいことがあった子どもたち。
この映画は消されてしまった命の一つ一つの物語を、私たちの胸にひとりひとり、刻みつける。
坂本美雨
(ミュージシャン)
ガザの子どもたち。愛くるしくキラキラ輝く大きな瞳。
普通に夢や希望を持つこの子たちが、今、今日、明日、その尊い命を落とすかもしれない。友達や家族を失うかもしれない。
パレスチナに生まれ落ちたというだけで、夢や希望を遮断され、
翌朝に目を覚ますことも保障されない子どもたちのこの現実に、心が痛む。
20数年前に、『プロミス』に少しだけ関わらせていただいた。
輝く大きな瞳の素直な少年少女たちは、今も元気でいるだろうか。
夢をかなえているだろうか。母や父になっているだろうか。それとも…。
私は10代の子たちの母親だけれど、今も続くパレスチナの状況を自分事として考えたときに、母親として到底受け入れられないし、乗り越えられないと感じた。
海外ニュースからだけでは見えてこない厳しい現実を、作品は教えてくれている。
心が痛くてしかたない。
芝崎直子
(映画『プロミス』字幕翻訳者)
飛行機に乗って旅行には気軽に行くのに、戦争はどこか遠くの関係ない場所で起こっていると思える感覚ってあまりに都合が良くて狂気じみている。
悲劇の切り抜きを見ると同情や憤りが瞬間的に爆発する。そうして他者を思えた気になって、満足したら自分のことで頭がいっぱいになっている日常。
私はそうやって毎日子どもたちを見殺しにし続けている。
『忘れない、パレスチナの子どもたちを』。映画が終わると忘れたように日常へ戻っていく鈍感な私を引き留めているように聞こえてくる。
呉城久美
(俳優)
この映画を見てイスラエルに対し怒りを覚えずにはいられない。でも、僕らは怒りで解決を望んではいけない。怒りはさらなる悲劇しか生まないから。
憎むべきは戦争であって無実のユダヤの人々ではない。
分断を煽るような偏った意見にも惑わされてはいけない。
子供たちの未来に我々が出来ること、それは怒りではないと信じたい。
亡くなったパレスチナの子供たちに心より哀悼の意を表しますとともに、ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
工藤将亮
(映画監督)
スーパーマンは何をしているのか?
おそらくはアメリカ大統領から
「政治問題なのでくれぐれも首を突っ込まないでいてくれたまえ」
と言われているに違いない。
だが、神経症的正義の味方の彼が何もしないでいられるのか?
多分、クラーク・ケントとして出来る限りのことをやっているのだろう。
ゴッホ今泉
(イラストレーター、「デパートメントH」オーガナイザー)
罪もなく殺された子どものなかに、絵を描くのが好きだったという子どもがいた。 ただパレスチナ人だという理由で、私と同じ趣味の子、同じ年の子たちが殺されていくのを見て、すごく胸が痛くなった。
「遠くの国のことだ」と思って、見て見ぬふりをする人も多い。「ハマスも悪い。イスラエルとパレスチナの報復合戦は永遠に続く」と、政治批判をしたり、あきらめたりしたりする人も多い。でも、悪夢を止めるためには、政治や宗教や正義を超えて、憎しみの連鎖を断ち切らないといけない。これは、世界市民の義務だと思う。私は、日本人でもあるが、それ以前に、自分のことを世界市民だと考えている。日本にはこうした意識が欠けている人が多いと感じるときがある。
2023 年の秋から、私には何ができるのだろうとずっと考えてきた。Free Gaza のパレードにも何回か参加した。でも、街の人々は私たちの叫びに無関心だった。欧米や南アジアでは、最近、パレードではなく料理を作ることで対話と連帯を訴えるマニフェストが流行しつつある。日本でも「戦争反対クッキング Cooking for Peace」とか、「戦争やめて料理をつくろう Make Food Not War」プロジェクトをスタートしてくれるシェフがいたら私は嬉しい。
二村香琳アネット
(14歳・京都国際フランス学園)
映画を見始めて、ホッとした。家族を愛する人々がポートレイトされていたからだ。
登場するのは、爆撃で亡くなった子供の家族たち。残された、家族たち。残された家族が、自宅でカメラの前に並ぶ。そして、語り始める。失った息子や娘たちの将来の夢や、兄弟たちとどんなことをして遊ぶのが好きだったのか。つまり、どんなに愛しているのかが語られる。
家族の手で残された子供がいた頃の何気ない平和な映像と、爆撃周辺の映像を並列して淡々と描くことで、心の奥深いところにメッセージが伝わってきた。
原マオリ
(『KYOTO MEMOIR』映画監督)
言葉が出てこない。この作品を見てもらいたいから、見てもらうための言葉を探したいのだが、最適な言葉を探してしまっていいのだろうか。貯金箱にお金を入れる瞬間に爆撃されて亡くなった子どもがいたと知る。最後に何を思ったのだろう。残された人たちのまなざしの奥に、強い動揺と強い怒りがある。許してはいけない。まずはそのことだけを強く思う。
武田砂鉄
(ライター)