優れた戦争映画はすべて反戦映画になる。この作品も例外ではない。ただしはみだしている。問題作のレベルではない。虚構か現実か。そもそもその区分けに意味などない。映像であるかぎりは(カメラを意識した)フィクションだ。でもこの作品は、その定義すら無効化する。軍や兵士たちはなぜこの撮影を許したのか。あらゆる意味で問題作だ。
― 森達也 (作家・映画監督)
かつて、戦争映画はドキュメンタリーでさえスクリーンのこちら側から鑑賞するものだった。しかし、この映画では兵士のヘルメットに取りつけた小型カメラと共に、突然戦場に放り出され飛んでくる弾丸におののき転がり回る恐怖を味あわされる。バーチャルな世界で戦争ゲームに興じる若者達、憲法を改悪して戦争したがっている政治家達にこそ見せたい。これが戦争なんだ!!と。
― 菊地昇 (写真家)
地獄が天国に見えるから怖い。とは黒澤明監督の「地獄の黙示録」への見事なコメントだが「じゃ、実際、戦争ってどうなのよ?」と思う人は本作を見ればよい。一見、虚構に見える逆転現象が、戦争は映画的快楽に満ちている、という当たり前だが実は非常にヤバい事実を語りかけてくる。
ある種の本質的な快楽というのは恐怖の中からしか出てこないのではないか?とさえ、この映画を見ていると思う。 戦争というのは人の心が何か?というのを簡単に暴いてしまうのかもしれない。 しかし、人はそれを認めたくない。認める事そのものが恐怖だからだ。 この心理メカニズムは誰の心にもある普遍的なものだと思う。
― 平野勝之 (映画監督)
初めて戦争を身近に感じてしまった…。自分探しのように若者たちが戦場で人を殺してる?まるで軽く肩を叩かれたような真実の告げられ方です。ていうか、戦争映画にして「あいのり」を見てるようなあの感じ…そう、リアリティ番組に感情移入して鑑賞者としての安全圏を守れなくなっちゃうあの感じ。ハイリスクと引き換えにそんな恐怖を僕に突き付けてくれた製作者たちに、表現者として最大限の敬意を捧げたいです。まさにこの映画は戦場のリアルであるとともに、先進国(ウチラ)のリアリティだ。
― 卯城竜太 (アーティスト集団Chim↑Pomリーダー)
自分が何を観たのか、いまだに混乱している。
映像素材は現実から採られたものではあっても、作品を作品たらしめている編集はフィクションのそれと大差ない。とはいえ、アメリカ映画のような、筋や人物の心理を示唆するたぐいの親切な文法はそこにはない。あくまでもわたしたちの神経をずたずたにし、ほんろうし、戦争の恐怖につきあわせようとする。近年、現代の戦争にまつわる映画が数多く作られてきたが、わたしにとってはこれをしのぐものは、今のところ、ない。
― 池田 香代子(翻訳家)
永く続いているアフガンの戦争は哀しくて暗い。その暗闇を若いデンマーク兵がのぞきこませてくれる。 最新装備を持ち、テレビゲームをし、携帯電話で故郷に電話をする彼等は、 幸わせな国から来た無垢な軍隊という意味で、まるで日本の自衛隊のようだ。 その彼等が戦争の魔性にとり込まれてゆく。それを密着して映し出していくカメラが見事だ。