イギリスを代表する音楽家ベンジャミン・ブリテンの《ウォ−・レクイエム》にのせて壮絶な映像美で綴ったオペラ映画。本作に使われているのはブリテン自身の作曲・指揮によるロンドン交響楽団演奏のもので、ゲイであったブリテンの生涯にわたるパートナー、ピーター・ピアーズがテノールを担当。そして、ソプラノにはガリーナ・ヴィシネフスカヤ、バリトンにディートリヒ・フィッシャー・ディースカウという3人の大歌手を起用している。

第一次大戦に出征し、若くして亡くなった戦争詩人ウィルフレッド・オーエンと従軍看護婦を中心に、第一次世界大戦からイラク戦争と同じく石油を巡る戦争だったフォークランド紛争まで、くり返される実際の戦争のイメージを引用し、戦争の不毛さと悲しみを描いている。

冒頭には何よりも平和を愛したオーエンの詩がナレーションとして使われ、世界から消えない戦争をモチーフにしたデレク・ジャーマンの異色作で、イギリス公開当時“ヴィジュアル・オペラ”の傑作と評された作品。