第62回ロカルノ国際映画祭コンペティション部門正式出品作品。世界が注目する小林政広監督が渾身の思いを込めて描く、21世紀の日本版『大人は判ってくれない』。
母子家庭で育ち16歳になる亮は、田舎町の粗末なアパートでひとり暮らし。
入院中の母を抱えながらも、コンビニのアルバイトで生計を立ててきたが、長引く母の闘病生活で家計は圧迫され日々の食事すら満足にできなくなっていた。
今日もバイト先のコンビニでレジをごまかし、おにぎりやサンドイッチを持ち帰り空腹を満たす日が続く。そんな中、同僚の木澤も亮を気遣うが誰も彼の孤独を埋める事はできなかった。
夏休みのある日、レジのごまかしが店長にみつかり、亮はアルバイト先をクビになる。生活の糧を失い戸惑う亮。やりきれない思いで、ひとり秘密の場所で父の住む東京の地図と、父と幼い頃の自分との写真をみつめる。それは亮にとって現実から目をそらす事のできる唯一の時間だった。
それでも、日々の生活は続く。
頼るあてもなく入院中の母のもとを訪れるが、希望を失った母は父への不満の愚痴をぶつけるばかり。亮は張りつめていた気持ちが一気に崩れてしまう。
やがて母の死がおとずれる。病院への支払や葬儀代の工面という現実に追い込まれ、亮の絶望と不安は頂点に達する。
もう、アルバイト代の残りも底をついている。そして、亮が選んだのは、母親の亡骸を自らの手で葬る事。
美しく青く塗られた小さなボートで、母を海に送る。
一人きりの葬儀のあと、亮は、住み慣れたアパートを後にし、父のもとへと向う。
亮は、ようやく父との再会を果たすが、そこには、幸せとは程遠い現実が待っていた。