体力は衰え始めたが、知力は全く衰えを知らないトム・ダウドは、ベテランアーティストだけではなく新進アーティストのレコーディングも続けた。
オールマン・ブラザーズ・バンドとの30年を超えるコラボレーションも続いており、プロデューサーとして、また信頼のおける友人としてグループにかかわっていた。彼は才能のあるギタリストであり、シンガー・ソングライター、ジョー・ボナマッサのデビュー・アルバム『ニュー・デイ・イエスタデイ』をプロデュースし、また2000年のグラミー賞のベスト・ニュー・アーティストの候補者であったスーザン・テデスキのアルバムの制作や、シンガーのジョー・コンディラッチに焦点を当てたアルバム『2』をレコーディングした。トム・ダウドがかかわったグラディス・ナイトのアルバムはグラミー賞にノミネートされた。また、どの会社とも契約していないアーティストたちを育てたり、ミュージシャンとしての素質を伸ばし続けたりもした。
トム・ダウドはその、途絶えることのないレコーディング業界への貢献によって、2002年のグラミー賞を受賞した。友人家族はロサンゼルスに集まり、彼がいつもの控えめで無私な態度で賞を受賞するのを見守った。
長い肺気腫との闘いの果てに、トム・ダウドは2002年10月27日にこの世を去った。彼を知ることは同時に彼を愛することであり、彼を知る者はみな、トム・ダウドを愛さずにはいられないだろう。
彼の人生を描いた本作は2003年に完成し、同年のサンダンス映画祭でプレミア上映された。そして今、日本を含む全世界が彼の偉業を知り、彼を愛する機会を得られることになったのである。