Introduction イントロダクション
日常的にサウナを楽しむ国・北欧フィンランド
自宅やオフィス、夏小屋のプライベートなサウナから、湖畔や街なかの公衆サウナまで、約550万人の人口に対して約300万個のサウナがあるという、サウナの本場・北欧フィンランド。日本人にとってのお風呂のように、フィンランドの人々にとって、サウナは生活の一部であり欠かせないものである。本作では、50年以上連れ添った夫婦、父と3人の息子、気のおけない友人同士、仕事終わりの会社仲間、スイミングプールに集うシニア、クリスマスのお務めを終えたサンタ、寒さを凌ぐホームレスなど、様々な人たちがサウナで過ごす姿が描かれており、フィンランドの人たちのサウナの楽しみ方を垣間見ることができる。また、フィンランドの春夏秋冬の美しい自然とともに、DIYによるキャンピングカー型や電話ボックス型のサウナ、そのまま湖に飛び込めるサウナ小屋、首都ヘルシンキや2018年に世界サウナ首都を宣言したタンペレの歴史ある公衆サウナ、ランプを吊るしたテントサウナなど、バラエティに富んだユニークなサウナが登場する。世界幸福度ランキング2年連続1位(2018/19)となったフィンランドの人々の日常に、サウナのある“幸せ”を感じさせる異色ドキュメンタリーである。
サウナで人生の悩みや苦しみを吐露し号泣するフィンランドの男たち
“サウナのあるところ” には、「なにか」がある?
本作の登場人物は、フィンランドの名匠アキ・カウリスマキ監督作品で見られるような、シャイで寡黙と言われるフィンランドの男たち。そんな彼らが、身も心も裸になったサウナでは、自然と語り始める。離ればなれになった娘のこと、犯罪歴のある昔の自分のこと、かけがえのない“親友”のこと、先に逝ってしまった妻や子供のこと・・・心の奥底にずっとしまっていた人生の悩みや苦しみ、大切な想いを打ち明け、次々と号泣する。サウナはどんな人にでも平等な場であり、ロウリュ(蒸気)に包まれながら語られる14のエピソードは、重くて辛いものも多い。汗と一緒に涙を流して自分自身を取り戻し、語り合った者同士の絆を強くさせるような「なにか」が、サウナにはあることが伝わってくる。究極の癒しやデトックスの場としてだけでなく、日本の銭湯・温泉文化にも通じる、人とのつながりを感じる場としてのサウナの魅力を再発見する。
Story ストーリー
熱くなったサウナストーンに水がかけられ、
ジュワっという音とともに、サウナにロウリュ(蒸気)が立ち上がる。
ロウリュに包まれながら、フィンランドの男たちは語り始める。
継父からの虐待、犯罪歴のある昔の自分、離れ離れになった娘、止められなかった職場での事故、先に逝った妻や幼い娘・・・これまで話すことができなかった人生の悩みや苦しみ。
子どもが生まれた喜び、かけがえのない“親友”との友情、老いてからの出逢い、祖父が薪に込めていた祖母への愛・・・じんわりと伝わってくる大切な人への想い。
「話すべきじゃなかったかな」
「話していいさ」
ロウリュはやさしく男たちの心を溶かし、絆を深めていく。
Comments コメント
(敬称略・五十音順)
そう、サウナは心のふるさとのような存在。
ひとりひとりの幸せを噛みしめる場所。
そんなサウナを単なるブームで終わらせてはいけない、
と、この作品を観て思いました。
悲しみが喜びが、サウナの中で汗となって流れ出す。
サウナの中で人は浄化されて行く。
そうです、悩みは一つの生理現象なのです。
でもたまには、悲しみを誰かに分かちあってほしい。たとえばサウナで。
観終わったときに、登場人物たちがみんな笠智衆に思えてきた。これは悲しみを知る大人だけがわかる映画だ。