90歳の気難しい現実主義者が人生の終盤で悟る、「死とはなにか」
『パリ、テキサス』の名優ハリー・ディーン・スタントン、最後の主演作。
監督:ジョン・キャロル・リンチ(『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』出演)
出演:ハリー・ディーン・スタントン(『パリ、テキサス』『レポマン』『ツイン・ピークス The Return』)、
デヴィッド・リンチ(『ツイン・ピークス』『インランド・エンパイア』監督)、
ロン・リビングストン(『セックス・アンド・ザ・シティ』)ほか
(2017/アメリカ/88分/英語/1:2.35/5.1ch/DCP)
配給・宣伝:アップリンク
COMMENTS
敬称略・順不同
竹中直人
俳優・映画監督
大好きだったハリー・ディーン・スタントンがずっとずっと仏頂面をしているんだ。なんだか観ていてやんなっちゃう。でも・・・でもね・・・ハリーが歌い出すんだ。メキシコの素敵な家族の前で・・・
是非スクリーンでハリーの姿を見届けて欲しい。ハリーの美しく優しさに満ち溢れた歌声を・・・
柴田元幸
アメリカ文学研究者/翻訳家
主役のハリー・ディーン・スタントンはもちろん素晴らしいが、逃げられた100歳の亀について誰かが切々と語る場面があるだけでこの映画を好きにならないわけにはいかない。 その誰かを演じているのがデヴィッド・リンチだというのはほとんどおまけのようなものである。
清水崇
映画監督
本作は、今の僕らに地続きだ。ラッキーのような老人は世界中にいるし、彼のような老人を蔑み、小馬鹿にする人もよく見かける。自分も老人になっていっているのに・・・・・・?
僕が年老いた時、偏屈でも穏やかに自分らしく生きられるだろうか。
役者が役者を見つめる本作には、劇的な要素など無い。
先輩名優への監督の眼差しに、全ての人への優しさを感じた。
いましろたかし
漫画家
死は各自色々であろうし誰でも死ぬのだが 砂漠の中の小さな街をトボトボと歩き 人と他愛ない話をしながら老いて死ぬのはやっぱりラッキーなのではないのだろうか? 映画は全てを語るものではないし、ましてや詩的でノンストーリーの映画となれば それを観た自分の印象が全てだと思ってるので、ああラッキーはツキがある奴だなあと感じた次第です。結構笑えました。
百々和宏
ミュージシャン/MO'SOME TONEBENDER
若い頃は「どうせ俺たち死に向かって歩く囚人だから~」なんて嘯 く歌が好きだったが、人生も半ばを過ぎりゃ死生観も変わる。終末を意識し始めた頑固ジジイ・ラッキーの懺悔にシンパシーを感じ、彼を見つめる周囲の暖かい眼差しにホッコリし、自由を求め脱走したリクガメを応援したくなる。私もこの映画の登場人物になりたいと思った。
幾原邦彦
アニメーション監督
感じることに正直に生きる。そのことは簡単そうで難しい。それは意固地に生きる、ということでもある。そのとき、人生はどこにたどり着くのか。
ずっと気になっていたことをハリーは教えてくれた。きっとつながっている。信じる勇気を与えてもらえた。
戌井昭人
劇作家・作家
初めて出会ったハリー・ディーン・スタントンはやさぐれた感じだった。次は寂しい男だった。他にも色々な顔を見させてもらったけれど、いつもどこか遠くを見ているような目をしていた。何を見ていたんだろう?
最後に、偏屈だけどユーモアのある彼の日常を覗かせてもらった。あの目は最後のその先を見ていたのかもしれないと思った。
町山広美
放送作家
♪降伏する準備はできている~
なんて愛おしいラブソングだろう。
もう間に合わないし、何も取り返せないが、後悔も恐れも身の内にとどめて。「好きにすりゃいいんだ」と言える人は、暗い深淵をこんな顔で見るんですね。
かくありたいし、こんな人に降伏したいしもうしてる。
高田漣
音楽家
名優ハリー・ディーン・スタントンの最後の名前は「ラッキー」。示唆に富んだ台詞の数々は「孤独」「死」「恋愛」などを朴訥 と語る。彼が人生の終わり間際に観たものは?笑顔の意味とは?深く深く心にしみる映画です。
小谷 実由
モデル
この世には、永遠もないし、絶対もない。ただひとつ、誰にでも最後には死という同じ現実がある。不思議なことにだいたいの人がその最後をわかっているようでわかっていない。同じことが起こるのに、その現実の受け取り方はきっと人それぞれ違う。どうせ全て無くなるものなら全力で笑って全うする人生でありたい。
マキヒロチ
漫画家
名優ハリー・ディーン・スタントンの最後の主演作である『ラッキー』は、彼との最後の旅行のような映画。美味しそうに煙草を吸い、しっかり地を踏みしめて歩く彼の一瞬一瞬が、宝物となって残ります。気難しい彼が秘密を明かし、少しずつ私たちに心を開いていくにつれて、旅行が終わりに近づいていることを感じ胸がしめつけられます…「あぁ、まだ行かないで!」彼のことが好きだった人、彼の映画を見たことがある人、沢山の人に彼との旅行に出て欲しい。そして彼の微笑みに微笑んで欲しい。ありがとうラッキー、あなたがとっても恋しいよ!
松尾貴史
タレント
この一人の老人の静かな日常を描いた80分、一時も目を離せませんでした。深く刻まれた顔の皺のひとつひとつ、一挙手一投足に、咳払いから瞬きに至るまで、見逃すまいとする自分に驚きました。