『ジャマイカ 楽園の真実』では、全編に流れるナレーションに、ジャメイカ・キンケイドの著作『小さな場所』からの文章を用いている。監督のステファニー・ブラックは、カリブの小島アンティーガ出身の作家ジャメイカ・キンケイドのこの作品を、舞台をアンティーガからジャマイカに置き換えてナレーションとして使うことを切望。
「彼女の文章は、私の感じていることに最も近いものである」
と2年間オファーをし続けた。
映画は、旅行者たちがジャマイカ島に到着するところから始まる。そこに、キンケイドの文章がナレーションで流れ、観客は息を飲むような島の自然の美しさの影で、深刻な対立があることを感じ始める。キンケイドの文章にある詩的な切迫感は、ジャマイカが抱えている植民地としての過去の遺産から、現在の経済的な困難までも伝えてくれる。
たとえば、リゾートホテルで南国風の料理を楽しむ旅行者たちのシーンでは、ナレーションがこうかぶさってくる。
「おいしいごちそうにありつこうとする時、それらのほとんどがマイアミから船に載せられてきたものであることは知らないほうがいいだろう。驚くべきことが起こっている。でも、今ここで深く追及することはできない。」(『小さな場所』からの抜粋)
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