「食の安全性」についての様々な事件も記憶に新しいところですが、原因不明のアトピーや化学物質過敏症に悩む人や子供をもつ人も多く、地球温暖化、農薬や化学汚染物質などの環境汚染を阻止しようという動きから、世界規模でオーガニックを推進する動きが大きくなっています。
オーガニック食材だけでなく、最近ではオーガニックコスメ、オーガニックコットンなど、私たちの暮らしにも少しずつ取りいれらています。
・オーガニック農法とは?
日本有機農業研究会では「生産から消費までの過程を通じて化学肥料・農薬等の合成化学物質や生物薬剤、放射性物質、(遺伝子組換え種子及び生産物等)をまったく使用せず、その地域の資源をできるだけ活用し、自然が本来有する生産力を尊重した農法」と定義されています。
19世紀に始まった化学合成物質を利用した農法に対抗する形で1950年代から提唱されてきました。
・ビオディナミー農法(バイオダイナミック農法)
オーストリアの哲学者、数学者であるルドルフ・シュタイナーによって提唱された、農薬を一切使わず、それぞれの土の性質を最大限に引き出す農法です。また、月や星座の周期など自然の力によって、農作物の成長が影響されるとして考えられています。劇中では、この栽培方法でワインを生産する農家が出てきます。
・有機JASマーク
日本では有機JASという規格が有機栽培の規格として制定されています。しかし日本で有機JASの認証を取得しているのは、283万戸といわれる農家全体のうちわずか3677戸。有機農法が広がらない理由として、JASマークの認証のため畑の検査や、毎年認証のための料金を払う必要があったり、マークを購入して農産物に貼らなくてはいけなかったり、手間と時間とお金がかかるためだといわれています。また、JASマークの意味や手間を理解していない消費者が多いのも解決しなくてはいけない問題です。
・有機農産物の栽培基準
- 種まき又は植え付け前2年以上、禁止された農薬や化学肥料を使用していない田畑で栽培する。
- 栽培期間中も禁止された農薬、化学肥料は使用しない。
- 遺伝子組換え技術を使用しない。
・有機加工食品の生産基準
- 化学的に合成された食品添加物や薬剤の使用は極力避ける。
- 原材料は、水と食塩を除いて、95%以上が有機食品である。
- 遺伝子組換え技術を使用しない。
・世界のオーガニック事情
世界の有機農業面積は2600万haといわれています。有機農家数が1番多い国がスローフード発祥の国イタリアで、5万6440戸(2.44%)、フランスは1万1640戸(1.6%)、日本は4636戸(0.18%重量ベース)。環境保護的な有機農法は世界中で実践されています。オーガニック生産国の第1位であるアメリカでは、農薬、化学肥料の影響に懸念を抱いた政府が援助をしていることと、一般食品に、使用された農薬を表示することが義務づけられていることが、オーガニック農法の普及の理由として挙げられます。
・日本の農業
日本の耕地面積は465万ha。1960年に606万戸あった農家が、2005年には283万8000戸となり半分以下となりました。有機栽培農家は4636戸。しかし、有機栽培の普及はもちろんですが、農業界全体を応援する必要があります。そのうち、専業農家が43万戸弱、65歳以上の農業従事者は58%を占めています(フランスでは4%)。食料自給率は1960年には80%近くありましたが、年々減少し、2003年には40%となってしまった日本の食料自給率は先進国の中で最下位です。純輸入額4兆600億円は世界断トツの1位、食料の60%を輸入に頼っているのが現状です。
・日本の農薬事情
日本の農薬使用量は、農家によって散布状況が異なるため正確な数字は把握出来ません。しかし、日本農薬要覧(平成18年10月019年9月)によると、1年間で農薬26万590トン、うち殺虫剤は10万360.5トンが出荷数量として記録されています。
この数字をもとに、耕地面積1haに対して撒かれる散布量を算出すると、世界の203位を推移しています。
・食品添加物について
私たちが普段口にする食べ物も、食品加工工程で様々な添加物が混入されています。
日本で定められている食品添加物の種類は、化学合成品351種、化学合成品以外1051種(既存添加物489を含む)で、約1500種類となります。食品添加物の国内での生産量から判断すると、平均的日本人は1日約10g、これを積み重ねると1年間で約3.6kgの食品添加物を摂っていることになります。