『パラダイス・ナウ』DVD発売を記念して、上映とゲストを招いてのトークイベントを開催しました。この日のゲストは、海外取材で活躍されているフリーカメラマンの嘉納愛夏さん。今年9月、ビルマで凶弾に倒れたジャーナリスト・長井健司さんと、パレスチナを始め多くの現場を共にした嘉納さんにパレスチナについてお話をお伺いしました。
本編上映後、嘉納さんからパレスチナの生々しい現状が語られました。
「イスラエル人の側から見たら、この映画のラストは戦慄だと思います。私は何度も自爆テロ直後の現場を取材・撮影したことがありますが、そのたびに虚無感を覚えます。ネットで、犠牲者たちの名前や背景、バスに乗った経緯が公表されますが、それまで全く知らなかった赤の他人が、私の中に『物語』を持って入り込んでくるからです。
具体的に言うと、2002年4月の現場で見た、首から上しかなかった老女は名前をリヴカ・フィンクといい、息子が車で送ろうとしたのに“バスがあるから大丈夫”と断った末にテロにあってしまった。現場で見た遺体の姿と、ネットに載った顔写真、そして背景を知ることによって全くの他人事が『知人の不幸』のような錯覚を感じてしまうのです」
また、長井さんが2002年にパレスチナで撮影した映像も併せて上映。イスラエルからの空爆で崩壊した建物の下に埋まっている多くの人々、長い時間をかけて助け出そうとする人々。そして、自爆テロにあった後のバスの悲惨な状況など、テレビのニュースでは見ることのできないパレスチナの現実が映し出されました。
最後に、会場からの質疑応答で、多くの海外取材を経験している嘉納さんから見た日本についての印象をお聞きしました。「海外取材をしていると、日本はなんて平和な国なんだろうと思います。満たされすぎていて、のほほんと暮らしている人が多い。でも逆に、それが一番いいのかなとも感じています。パレスチナのように自分を必死になって守る必要がないのですから」